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アートコラム

2023/02/10

財団設立40周年記念インタビュー「江東区の文化~未来へ~」第10回

「文化とまちづくり」

地域とつながる「かめたん」

 江東区文化コミュニティ財団とのお付き合いは、2007年に亀戸文化センターで開催した「亀戸のまちのサポーターになろう!」の講師をつとめて以来です。この講座は、亀戸のまちづくりに貢献するサポーターの養成を目的に、文化施設と大学の事業連携で実現しました。

 この時、受講生と芝浦工業大学の学生で一緒に作ったのが「亀戸“福”都心単語帳(通称かめたん)」です。実際にまちを歩いて亀戸の地域資源を掘り起こし、身近にある準文化財や親しみのあるものなど、約140件を写真と説明文で紹介しました。

 「かめたん」の制作は大変でしたが、講座をきっかけに「亀戸まちのサポート会議」というグループが誕生し、まちづくりのベースとなりました。大学としても地域とのつながりが持て、今でも地域の方々とのお付き合いは続いています。

文化とまちづくり

 最近、豊洲文化センターで、豊洲や湾岸エリアの歴史・文化を話す機会が増えました。毎回たくさんの受講生が参加してくれます。その多くは豊洲に引っ越してきた新しい住民の方々です。東雲運河にある東京湾旧防波堤や東電堀など、日本の高度経済成長を支えた豊洲の歴史をお話しすると、皆さん驚かれます。

 区内の中でも豊洲は新しいまちなので、その影響もあるとは思いますが、自分たちが暮らす地域の歴史や文化に興味を持っている方が多いということです。実はこれこそがまちづくりのベースで、地域文化の理解なくして、まちづくりは語れません。

 昨年、江東区の地下鉄8号線のまちづくりに関するワークショップにも講師として参加しましたが、地域文化に詳しい方、まちに興味を持っている方が多かったです。突然ワークショップを行っても良い論議はできません。常日ごろからまちに目を向けているかどうかが大事なのです。

 以前、教え子の中国人留学生から「未来のまちづくりのために、なぜ歴史の勉強が必要なのか」と、質問を受けたことがあります。とても良い質問で、現在のまちは過去にあった様々な出来事の積み重ねで今がある。その積み重ねを理解しないで、未来のまちを考えることはできないわけです。

地域の核として

 地域住民がつながりを持つことも、まちづくりには大切です。その点、文化センターの存在は大きいと思います。今後も、様々な講座を通じて受講生同士がつながりを持ち、まちの魅力を発見できるような講座を続けていただきたい。

 そのためには、教室で講師の話を聞くだけではなく、センターから飛び出してまち歩きをしたり、ワークショップで何かを作り上げるような、自ら行動するきっかけとなるような講座を行ってほしい。

 例えば、豊洲文化センターでは区民協働事業としてミニコミ誌を発行したり、イラストマップを作っています。私も地元の月島長屋学校という地域活動で、メンバーと地域雑誌を発行しているため、制作の苦労はよく分かります。でも、そこで生まれた参加者たちのコミュニケーションは、まちづくりのしっかりとした土台となるのです。

 また、地下鉄8号線をはじめ、区内で行われているまちづくりの動きとリンクした講座なども、企画していただければうれしいです。

 文化センターは区内各所にあり、地元の方々からは地域の核としての期待も大きい施設です。今後も江東区の地域文化やコミュニティ振興のため、ますます頑張っていただきたいです。

(聞き手/片山祐子)

プロフィール

志村秀明(しむらひであき)さん

1968 年中央区月島生まれ・在住。芝浦工業大学建築学部教授。専門はまちづくり、市民参加、都市計画。博士(工学)、一級建築士。2006年日本建築学会奨励賞受賞。東京都江東区景観審議会委員、江東区都市計画マスタープラン推進会議委員長ほか。

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